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8日
曇。8,00am起。久しぶり布団で眠る、しばらくぶりに血圧計って128-75。動揺性なれば安心できず。自己流栄養補助食品にビール酵母カスを加える。ビール断ってカス服用、米止めて糠、麦を拒否フスマ、老いぬれば霞ならぬカスを食いて長寿。文学界連載単行本化手入れ。5,30pm眠7,00起、この程度の午睡よろしい。荷風わが歳でもはや玉の井じゃなく浅草通い、踊り子に文化勲章受賞を祝ってもらっている。3食次女の楽屋弁当。「阿闇世コンプレックス」読みつゝ眠。


9日
晴。7,30am起。英国マーガレット王女逝去、われと同年。醜聞で騒がれたのは、30数年前か、王女たちのスキャンダルのお相手、以後、いかに過ごすのだろう。ソルトレーク冬期五輪開幕、わが選手団、相変らず競技団体の幹部が目立つ、不格好きわまりなし。ブッシュ、「戦いの中のオリンピック」を名言。2,00pm、葛西の水族園見物に行く。東京駅の地下深く京葉線の始発駅と聞いたのは何年前か。中央線下車初めてなれば、延々の感じで、たしかに下りエスカレータ、動く歩道乗り継いでホーム到着。土曜のせいか館内混雑、巨大鮪のパンパンに張った体つきにみとれる。水族園近くに寿司屋を出したらどんなもんか。帰りは水上バス、東京から沖縄まで44時間の船が出る、乗ってみるか。俺は踊り子よりオサカナの方が良い。「差別語から入る言語学」読みつゝ眠。


10日
曇。5,00am起。寒のもどりとか。室内7度。野鳥に餌。ボギー散歩、神田川の鯉に餌。繋がれっ放しの近所の犬2匹に餌。下高井戸のファーザーノサカ。敷地百平米以下の戸建てが急速に増えた、住人をみることはない。楽屋弁当と、差し入れの高級クリーム菓子にプリン。軽トレというよりストレッチ。単行本化手入れ。この加筆、どうしても字が小さくなるのは何故か。英語聞きとりCDで眠。いちおう毛布かぶる。


11日
快晴。寒い。室内暖房つけっ放して13度。今日は紀元節と気づく。何が建国記念の日か。どうせいい加減なんだから「節」でよろしい。「ヒトケタ」参考文献として「団塊世代新論」読む、「自らの価値観について疑いを抱かぬ希有な世代」とのこと。ヒトケタも昭和4,5,6に限ると、かなり際立つが。冬期五輪のモーグルとやら、つくづく御苦労様な競技。女子選手、美人になった、「出花」という奴か。


12日
快晴。4月出版予定の「文壇」30枚加筆で、筆を擱く。九十まで生きられたら、もう一度書こう。肉屋、売上げ半減が続くらしい。日本人は魚食ってりゃいいといってきたが、やっぱり気の毒。雪印系列販売店も同様。ただ、昭和18年頃の、不要不急業種統廃合時の、主人たちの悲愴な顔を憶えている、あれに較べりゃ、まだのどか。戦時中自殺者の統計を調べてみよう。


13日
晴。4,00am眠。起10,00am。本日より家族不在。不燃ゴミ出せず。とりあえず飯を仕度のうち、冷蔵庫の内容片付けにかゝり、よくあること、漫画にもギャグにもならぬ賞味期限前世紀がゾロゾロ出てくる。沖縄の木場氏より賜った、業務用冷凍庫で、この空間はゆとりがある、いろんな非常事態に備えた食いものを納めているが、いざとなれば電気もとまる、適量について考えこむ、まったくムダなもの思い。ぐったり疲れ、夕刻まで眠。7,00pm、国書刊行会、島田氏来訪、30年前のわが長篇、雑文を選んで、秋より刊行。島田氏、自らの酒癖を、ビール飲みつゝ淡々と語る。断酒の身に興味津々、少し前までの自らはまったく棚に上げている。


14日
晴。6,00am起。梅満開。手入れをすれば別、放りっぱなしだと、この時期の庭がいちばん心落ち着く。夏なら、雑草除りばかり考えて苛立つ。ファクシミリ、送信に際し、シミが出るらしい、ゴミ付着のせいとか。電気屋にみせようと、機種を申告すれば、机辺の利器、「なんでも鑑定団」出品に近いコットウらしい。ファクシミリが、文壇消滅の原因の一つ。流行作家はべつだが、当方、単発の場合、編集者の顔を見ぬまま。近頃、詳細には読まない新聞の政治面、少しまとめて読む。わが国のアメリカべったりは異常。買物ついで、題名にひかれて「硫黄島の星条旗」を求め、つい読みふける。有名なスリバチ山に星条旗を掲げた6人のアメリカ兵についての話。著者はまったくの素人、おすゝめ本だが、さて、この島について今、日本人の何割が知っているか。15日、払暁に至り、あわてて眠。本日、12,30pm、東女医にて心臓検査。この分野におけるわが主治医不在。基本的なあれこれ調べて、28日、さらに精密検査、べつに異状があるわけでもないらしい。ホルダー心電図、24時間血圧計装着。16日の予定大幅に変更。計測器にまといつかれていると、何もできない、いや、日常の動作に支障はないが、只今のワタクシ、ぼんやりしていりゃしてるで何もさしつかえない。「文壇」の念校手入れ。来月6日、これに登場の、昔の編集者諸老、わが労をねぎらって下さるらしい。筑摩書房専務松田哲夫氏、出版を祝う会の案内状届く。全共闘より少し前の世代、松田と原田で小説書ける。2人は大学同学年、この2人の、現在の写真を並べるだけで判るものには判る、日本の戦後硫黄島でたたかった、昭和55年以後。こりゃおもしろそうだ。猪瀬直樹「ペルソナ」通読して暁きに至る。


16日
晴。9,00am起。資源ゴミ辛うじて間に合う、あわてて木戸開けっ放しのまま運び、ボギー道へ出る。ジジなら一目散に駆け出し、追っかけっこを楽しむ感じだったが、ボギー、どこへもいかない。聴覚ほとんど失われている。体に計器まとっていることを、この時は忘れて、心電計、壁にぶつける、果たして計測いかに。3,00pm、東女医で計器取外し。下高井戸で買物、古本屋にかねて依頼の、大正期購読雑誌が来ていた。高い。「ヒトケタ」書く。書斎片付けるつもりが、なお乱雑、体を横にし得ず、探しものすぐ行方不明。たとえば万歩計、和独辞書、孫の手、早大仏文同級生名簿、うっかり歩くと古いミカンを潰して大事に至る。気づけば、来客時いちおうはきかえるズボンの他、正月から、家のなかではずっとセーター、トレパン同じもの、靴下だけは、10日に一度替えている、あれはやはり臭うものだ。


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