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十月十三日
体力回復に向い、読書。日記となれば、手本は永井荷風「断腸亭日乗」1917年から1959年まで毎日つけた。
身辺雑記、日々の心情、偶感の他、社会現象についての見聞もみえる。歳をとっても、こまめに外出、世間を観察、えらいものだが、この外歩き、女の許へ通ったり、芸者遊びが目的。すぐれた日記を書くには、女遊びが欠かせない。

有名人の日記によく「散歩」が出て来る。注意して読めば、時間が長過ぎるし、帰宅時刻不明。これは、妾宅へ出かけたこと。

豆知識 「妾宅」 若い女に住い、手当てを与え、こっちの都合の良い時、気分が向けば出かけて、休む。一夫一婦制には必要なモノ。昭和の初めまで、妾宅文化があった。


十四日
復調とはいっても、盛り場へ出る気力はまだない。近くで買物。
「西友」温泉卵10個450円。ナマリブシ2片328円、外税38円。
鰻屋でウナ重3750円、久しぶりのしっかりした食いもの。「いなげや」カステラドーナッツ100円、生イクラ398円、メンタイコ498円、ミニ絹豆腐78円。外税36円。本来、スーパーで人間の食いものは買わないが、止むを得ぬ。酒を断つとむやみに腹が減る。中日スポーツ2枚書く。


十五日
一日雑本を読む。近頃の小説内外とともに著しく長くなった。パソコンで、簡単に資料を検索できる、指でキイを打つ書き方、ワープロに慣れると、文章がゆるむ、これは確か。で、延々のびてしまう。書店で平積みされた小説本の作者、ほとんど知らない。


十六日
今日から頑張るつもりで、犬を連れ散歩、昭和初期開かれた住宅地、朝夕の出勤通学時を過ぎると、まったく人影をみない。不景気というが、いやだからこそか、建て替えが目立つ、出来上ってみれば、小さな安アパート。2DK9万円と不動産アッセン業者の店頭にあった。各種、頂きもの礼状書く。夜、昭和ヒトケタ生れについての長篇雑文書き続ける。つい、昔の何やかや思い出に引き込まれ、筆すゝまない。本日、三食きちんと摂り、腹筋運動少し。


十七日
飢え、原発事故、地震で、日本滅亡は、はっきりしている。その時期は、5,6年先き、原発事故に始まる。一日執筆。


十八日
「ハリーポッターと賢者の石」はどんな人が読んでいるのか。世界で一億冊売れているらしいが。「千と千尋のナントカ」なる映画も奇妙。えらい興行収入のわりに、観た者の感想を聞かず、批評もない。評判につられて観る、ちっともおもしろくない、しかし、うっかり、本音を洩らせば、変った人にみられやしないか、皆、にやにや笑い、「まぁ、監督にカリスマ性があるし」などごま化す。小泉支持と根は同じ。




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