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7月1日
曇。起11,00am。徹夜で呆然としていた。娯楽本を読むでも、葉書に,「文壇」がらみで戴いた手紙の、返事を書くでも、そのつもりはあって、机に置いてはあるが、筆をとれない。「私の欠点」という小説について、いちおう考えてはいた、とことん自覚する欠点を並べ、その具体的弊害というか、実例を並べる。NHK、8月5日から放映の「人間講座 終戦日記を読む」テキストを書くうち、気が滅入り、つくづく俺はダメな奴と、改めて思い当たり、物書きの性、小説にしてみようと開き直って、結局、能無しの考え、呆然に至る。で、酒を飲む。お定まりの罐ビール1本のつもりが、折悪しくお中元、「日刊ゲンダイ」の下された箱、開けてしまう。10,00pm、NHK、テキストの最終ゲラ、チェックをFAXですませ眠。時刻不知。


2日
何時に起きたか判らぬ、つまり、醒めて飲み、酔っては座布団枕に眠る。いちおう犬、猫、野鳥に餌、菜園に水、この間もビールの罐を手放さぬ。明日は夕刻より、「終戦日記」撮影のため、福井へ出かける、どこかで止めなければと思いつゝ、酔って呆然、醒めて愕然。夕刻、ビールを林檎ジュースに代え、眠る、5,30pm。8,00pm起。足元ふらつく、フラフラ外へ出て、駅前寿司屋、血液をサラサラにするというトロと鯖、2人前食う。Wカップ開催中、一度ここで食った、常なら、綿ぼこりの如く、隅で丸まっているお内儀さんまで、オフサイドがどうのこうのと眼を輝かせていて、驚いたが、今は元の綿ぼこり。おそいから、近所の商店主人が客。ご連中の酔いっぷりを支えに、正気へと戻るべく、ひたすら食う。


3日
起4,00am。ひたすら水を飲む。五体脱力。ずっと横になったまま夕刻、東京駅へ。車中半睡状態で、9時過ぎ、福井着。ホテルで昏睡。どうにか酒は切れたが、アルコール依存症にして、酒の弱くなっている自覚が強い。喜んでいいのやら――。



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