ホーム > 旅の果て日記

8月16日
UVを塗りたくり、ツバの広いシャッポかぶって散歩、足の衰えが気になっている。ペットボトルの水飲みつゝ8000歩。町は死に絶えた如く、店屋はスーパーマーケット、コンビニ以外はすべてシャッターを下し、喫茶店も休み。「文壇」六刷り、笹塚の書店で、「ロングサマー」とお世辞をいわれ、気を良くする。戻って、処分するべき本をまとめる、もはや未練を残すことはない、家の中の余計なもの、すべて捨てたい、で、結局、台所の物入れの奥の古い鍋と、冷蔵庫の期限切れをまとめる。俺の前世は下女中だったか。夕刻、草刈りバサミで1坪はど雑草の始末、こう伸びては、芝刈り器使えない。牝猫またしてもシーズン、玄関の冷たいタイルの上で、特有の声あげつゝもだえている、去勢した雄猫はもっぱらゴキブリ退治。


17日
少し小説書く。「老い」がどうした、「人生」「目的」がこうしたの類いは筆にしない、エロ小説でいく。俺がいちばんうまいんじゃないか、事実、注文が多い、われは小説家として死ぬ、説教屋にはならぬ。過激といわれる少女小説、劇画を求めて出たが、近くの書店休み。やっているのおはパチンコ屋。渋谷まで足をのばし、トンカツ。ホテルロビーで涼み、ここも閑散、ベーグルとやら食う。夜、訃報に接す。嫌酒薬、眠剤、南方に台風発生。


18日
短文2種書く。対談依頼、インタビュー申込み、日曜というのに、TEL、FAXしきり。夕刻より、台風の前兆。メルマガ少し書く。はやりに合わせる気毛頭ないけれど、神戸時代から、ずっと一緒にいた犬たちについて小説仕立てホームページ上で発表する。犬と離れていたのは、昭和19年から22年まで。実はこの間、犬を1匹たべている。神戸の頃は雑種で、名前すべて「ベル」23年からスピッツの牝で「お七」、牡は「助六」つゞいて雑種「クロ」、1匹1匹克明に性格まで覚えている。そして犬を思い出せば、歌と同じ、当時の自分がよみがえる。


19日
台風近づいて、昨夜来から激しい雨。NHK収録。山の上ホテルで原稿。ルームサービスで海老フライなるもの食う。トンカツの他、外での洋食は何年ぶりか。ずっと風呂に入っていない、思いきって入ろうかどうしようか思案するうち眠ってしまう。このところ新聞、週刊誌読まず、もとよりTVを観ず、巷にありて隠者、というよりホームレスか。水だけは飲んでいる。TV出演で、うわべ装えど、下はメチャクチャなり。





ホーム > 旅の果て日記

野坂昭如オフィシャルサイト nosakaakiyuki.com
(C)Akiyuki Nosaka. All Rights Reserved