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9月1日
晴。子供の頃、三寒四温という言葉を聞いた。中国大陸、特に旧満州の冬の気温をいい、「大陸性」なのだそうだ。これに比べ、温和なのが「地中海性」、当時は、瀬戸内海に置き換え「内海性」といった。話は違うが「日本海」も、やや夜郎自大ではあるな。今年の8月、「三涼四暑」台風一過、えらく凌ぎ易くなって、ヤレヤレと思う間もなく炎天ぶりかえし。私にすりゃ、散歩で切実に判る、そして、気候の記憶は実にあやふやであることに気づいた、去年の夏の終りがどんな風だったか、覚えがない。9月1日前後、マスメディアは地震をとりあげる、けっこうなことだ、できれば、映像で阪神淡路震災の惨状をみせるといい。予知は、日本のやり方じゃ今世紀中は無理、雲の様子、生物の行動、水位の変化、海の異変を、集めるといい。どうも予知連は、役所風。地震予知省をつくり、スーパーコンピュータ何台もで、一見たわいない情報を整理、分析する。裏公共事業。下越地方から山形へかけて、向う30年間に、マグニチュード7,3の地震の起る確率3%なんて、インチキ八卦見よりひどい。これは、偏差値重視の如実な表われ。雨の降る確率50%なんてのもそう。「夕刻にかけて雨もよい」でいい、天気に関する、特に雨関係は、ショウヒシャも、セイサンシャとお天気を共有していたから、形容が豊富、しゃれたいいまわしも多い。言葉のはじめは挨拶、日本は「神」じゃなく、天気が主体だった。夜、ゲラのままの、旧稿手入れ。およそ手をつけなかったのだが。


2日
晴。雑誌原稿7枚と3枚。2,00pm、ブレーンジャックで歌の練習。ゲラ手入れ、果して、この作業で作品の質が良くなったかどうか。出来事、日時、語法の誤りはいい、あたらしい知見も加えるが。しばしば大幅削除。カタログハウスより頂いた梅のエキス、なんだか霊験あらたかな感じ。このところ、風呂は依然入らないが、よく顔を洗うようになった。到来の秋、冬向けブランド屋案内を眺め、マフィア風に決めてみようかと思案。


3日
晴。原稿10枚。刊行物のオビ百字。ディヴィット・L・ロビンズ「戦火の果て」読む。1945晩春から初夏、つまりベルリン陥落直前の、米英ソ首脳と、ベルリン市民の生活を書く。爆弾攻撃は描写できる、焼夷弾は、ぼくにゃ書けない。石造りの建物のこわされ方は文字となし得る、おらっちの方は、ただ、上野の山から品川が見えただ。跡片付けも、まるで違う。ナチスとユダヤ、ブッシュJrとイラクをふと思う。そして、アンネ・フランクをかくまった家族の勇気、選択を考える。ベルリン陥落直前まで、ベルリンフィルは、練習をつゞけていた。


4日
1日、ゲラ手入れ。と、散歩。と、いささかげんなりの血圧によろしいというナニヤカヤ食って、眠。



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