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10月2日
晴。大型といわれていたわりに、少なくともわれにその実感はないまま過ぎていってしまった。暑い、風邪も去った。砂防会館に元首相を訪ねる。アメリカの対イラク攻撃を「暫」と再考うながすグループへの加入を求めた。元首相趣旨におおむね賛同ながら、自分は1人でやる由。アメリカの尻馬にのっかって、軽々しくふるまっていると、わが国もテロの対象になる。アメリカの象徴がWTCトゥインビルなら、日本は新幹線。今の、日本の経済低迷、あげくの弱体化、三流国、極東の、資源のない、ただ自然には恵まれ、人柄もやさしい小国として生きるのがいちばん。この移行に際し、飢餓さえ発生しなきゃ良い。国家が、意志的に「小国化」を目指した例はない、「憲法」を後生大事に護持してりゃかなえられると思う。大国化は滅亡への道。


3日
曇。「新潮45」書く、文字を書くだけで食えりゃいいのだが、生活の巾が広がっている。定年でもありゃケジメもつくのだろうが、わがなりわいにおいて、はっきりしない。TV、講演で恥をかきつゞける由縁なり。それに、せめて一度、質はともかく大ベストセラーを出したい。書店の平積み、「老い」「日本語」「犬・猫」及び女流作家全盛。そうそう「ハリー・ポッター」に「タレント本」、小説は「時代」「推理」「ホラー」。つけ入るスキはありそうだ。このところ睡眠まとも。快食快便にしてボンヤリしてちゃしょうがないね。


4日
晴、暖い。「オール読物」の小説書き出す。6,00pm、全日空ホテル、橋本治、斉藤美奈子の受賞パーティ出席。橋本とは20年以上逢っていない、顔を見に出かけてびっくり。いちおう「文壇」関係の寄合いなのに、土建業者の叙勲記念会風、1人も見知った者がいない。完全に一世代おくれた。以前、こういうパーティで、主賓とあまり関係なさそうな古い作家が、壁際の椅子に座り、まったく無視される中で、黙々と食べている姿を眼にした。今、われがこの立場か。ただ座りはしない、服装でいえばもっとお洒落、にしても1人ぽっち。氷水4杯飲んで退散。


5日
晴。TBSラジオ出演。TVタックル出演。間に原稿6枚。下高井戸へ買物間に合う。買物袋ぶら下げて歩くうち、若い女に声をかけられる、今月27日、武蔵野大で唄いかつしゃべる寄合いの主催者側だった、女からナンパされるのは初めて胸ときめかせて損した。近くに住むらしい。「天皇制」を読み暁きに至る。アメリカは、昭和17年夏あたりから、日本占領の際の「天皇」の地位を研究している。




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