ホーム > 旅の果て日記

10月6日
依頼されながら、どうもまとまらない短文2種、一日かかりっきり。夜に入り雨。


7日
晴、気温上る。短文仕上がらぬ、こういう時、つい睡ってしまい、起きると時差ボケ風。このところ血圧安定。ウコン、沖縄の青汁、梅肉エキスのおかげか。70過ぎた方の、自費出版が多く出て、当方にも御寄贈いただく、これでけっこう混乱する、17歳9ヶ月で、赤紙による召集を受け、入営した方がいる、本来、あり得ないのだが。とにかく「ヒトケタ」のためメモをとる。戦時下の記述は少なく、大体、自慢話。当然だろう。


8日
曇。昨日とうって変り寒い。「オール読物」テーマを変える。このところ、助平老人の回顧譚を時に書いていたが、たまにはまともに「老い」と向き合ってみよう、この10日で72歳。自覚としては、階段昇り降りの際、自然と端、つまり手すりの近くに身を置く、ころんだ時の用心。また、信号の青が点滅したら無理して渡らない。腹が立つのは、若くもない女に追い抜かれること。時に思う、俺はおやとしてどうだったのか。夕刻より10キロ歩く。フラフラッと入った喫茶店でビール2本、無理してスパゲッティを腹へ入れ、依存症を断つ。食えばいいのだ。


9日
雨。am9,00よりpm5,00まで3件打合せ。6,30pm、赤坂四川飯店で、「文壇」7刷祝賀とやら、古い編集者9名と食事。11月から、「野坂昭如リターンズ」4巻が国書刊行会より出版される。いずれもぶ厚い、「野坂昭如コレクション」3巻と合わせれば、かなり本棚の場所をとる、うかつに贈呈申し上げれば、先様の御迷惑。何しろ古い作品の再御目見得、あたらしいのを書かなくっちゃ。pm9,30帰宅。金井美恵子氏が探していると妻が伝える、金井さんとは、20年逢っていない。こちらから掛けてみると、金井さん、「お願いがあります」しごく切口上、「はいはい、あなたのお願いなら何だって」「キョウカショなんですけど」教科書?今、詩、小説が教科書掲載されるに当って、作者側の申し立てが問題になっている、不当に印税が安い、小説の場合、ズタズタに切られてしまう。しかし金井さんと教科書の結びつきが判らず、だがすぐ、キョウカショの上に「泉」が加わって、泉鏡花賞と判明、ありがたく頂戴する旨お答え申し上げる。鏡花賞の性格は知らない、第一回が半村良氏、つまり幻想的、怪奇風、あるいはロマンティックな作品が対象のはず、金井さんから、金沢市役所の担当に代り、授賞式は来月6日とつげられる、原稿のたてこむ頃だが、日帰り可能なはず、賞を戴き、その授賞式にも出席。考えてみると、名を冠せた文学賞の、名前だけ考えれば、鏡花はやや異端ながら、いちばん上じゃないか。もっとも何故受賞したのか、まるで見当がつかぬ。



ホーム > 旅の果て日記

野坂昭如オフィシャルサイト nosakaakiyuki.com
(C)Akiyuki Nosaka. All Rights Reserved