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2月3日
6日まで、月刊誌連載を書く。かつて小説雑誌に小説を書いていた頃、月の上旬は締切だらけ。現在小説こそあまりないが、やはり短文の締切がここに集中している。短かい文章を書く際、以前に比べ、見る目が固くなっている、視点が固定されている感じ。以降10日までゲラ手入れなど。


11日
建国記念日。というより、こちらにすれば紀元節、かつて「愛情は降る星の如く」を書いた尾崎秀実が、毎年紀元節の頃が一番寒いと獄中にあって述べているが、確かに寒い。小学生だったぼくは神戸の六甲山から吹き下ろす寒風に指がかじかんで、閉口した覚えが紀元節と共に今でも蘇る。


12日
不燃ゴミの日。ゴミ奉行として片付ける、ひょいと見ると大きなミミズが1匹、果して生きているかどうか判らないが、どうしてアスファルトの上にいたのか?どうか生き永らえてくれるよう、塀越しに我が庭に投げ入れる。


13日
朝から鬱。老人性鬱か、と考える。激しい運動を控えるようになってからのような気がするが、自分で鬱を意識するうちは鬱じゃないのだろう。午後、打合せ。執筆少し。


14日
2,00am、J’scat会合へ。何分にも相手のJASRACは天下りと弁護士と官僚ばかり、あの官僚体制についてぼくらがはっきり言うには、ものを作る人間としての自覚ということを考えなければいけないだろう。皆さんのご意見を拝聴しつつ、往年の迫力がやや失われたように思う、申し訳ない。


15日
午後、TVタックル収録。ぼくは彼等が言っていることを5、6年前から言ってる、今さら何をの感じが強く口数が減る。戦争後遺症と言われようと、もっとムキになってしゃべればバラエティショウとしては面白いだろうが、ぼくはもはやテレビの擦れっ枯らしになっている。ただ、殆ど喋らないビートたけし氏、阿川佐和子さんの存在感は、象徴的にTVというものを表しているし本来の在り方だろう。大人の見る番組としては、現在一番高いランクにあると思う。


16日
散歩の途中、若い女性に呼び止められ、自分の携帯番号の書かれたメモを渡される。見たところ27、8歳、まあ結構美人の部類ではあったが、妙にはしゃいでいる感じがなにやら恐ろしく、ゴニョゴニョ言いながら立ち去る。ぼくは72歳だが、よく20歳代の人に声を掛けられる。本来ならば、40年ぐらい前にこういう雰囲気を身につけていれば、ぼくは男として恐ろしく楽しい思いをしただろうに、ほんとにズレている。





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