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4月20日
曇。麻雀で朝帰り。TV、朝刊をしばらくぶりでじっくりながめる。戦争で得るあの地域の現状、歴史。チグリス、ユーフラテスの流れを眼にすれば、いささかアイダミツオ風感慨、人生論ブームもまたむべなるかな。
赤ん坊の生きようとする真摯なまなざしなんて月次に感動したりして。4,00am眠――12,00pm起、久しぶりで8時間、連続睡眠。原稿3枚、ゲラ手入れ後、散歩、一昨日の6月上旬並みはどこへやら、寒い。猫の餌を買い、ゴミ袋を求め、ちょっと走ってみる、こんなに運動好きとは知らなかった、とにかくサンドバッグを殴りたい。マイケル・クライトン「プレイ(獲物)」を読みつつ眠。クライプトン、こんなの小説なんてものじゃないが、眼のつけどころは良い、及び、上巻の、失業亭主奮戦ぶりは、面白い。いかにもありきたりなだけに、クライプトンの表情が浮かぶ。結局、徹夜。


21日
起1,00am。このところ睡眠支離滅裂。眠くなったら寝ると開き直っている。若い人からの手紙激増、ホームページのせいか。そのほとんどは手書き。楷書風と、自分流崩し字の2種にはっきり分れ、後者について、半分も読めない。原稿書けず、雑読。初めての作品が直木賞候補となった書き手、注文殺到して、あげく倒れたと聞く。本屋に新作書き下ろし4冊が並んでいる、おそらく空前の快挙であろう。一時の新人大売り出しの風潮はなくなった。6,00pm眠、秋田出身の女性がサツマイモを持参、ガマの油売り風の口上を述べる夢。


22日
晴。起1,00am。7時間連続睡眠なお眠い。よく眠ったという充足感より、目覚めたときの、時刻感覚があやふやで、不安。机に向うもかけず、また、手紙を誰彼に書く。暁方。鳥の声しきり、まだ暗いが、硬くなった古いパンを4ポンドの金槌で叩き、粉にして餌台へ。少し大きいとカラスが持っていってしまう。娯楽小説雑誌いろいろ到着。考え込む。今更、文体を変えることは出来ない。ただ、若い才能、まったくどうでもいい書き出し、ありきたり、自分を棚に上げて申し上げるが、緊張感がうすい。当方から見て、どうでもいい会話が多い。時代、推理小説はまし。


23日
晴。鎌倉へ取材。京王線、山手線、東海道線でまず大船。ここには、私に生命の糧を賜わったお乳母さまが以前いらした。書くべきことはいくらもあると思い込んでいるのは、老化の兆しだろう。何も文字にならない。小さな祠の写真撮る、今更遅いが、日本中にあるお稲荷様や庸甲様、道祖神、お地蔵様に興味がある。わが国の地霊信仰は、現物の前に佇まないと判らない。各種各様、きちんとお祀りしてある。久しぶりに銀座で、少し飲む。



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