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5月2日
曇。起6,ooam、久しく静かだったカラスの声しきり。朝昼夜の定時血圧測定、このところ120−70と安定、WHOの新しい標準値そのもの、俺は基本的に権威に弱いと妙なことを考える。「安定」もまた不安なのだ。「弱気」「小心」「怯え」について想いを深くし、無為に過ごし、2度の仮眠を経て、夕刻、発声練習、猫3匹かたわらでうずくまっている。9,45pm、TBSTV迎え。ニュース23出演。6月18日NHKホールコンサートについて、小沢昭一、永六輔と論を深める。筑紫哲也、深刻に聞き入る。


3日
晴。7,00am起。6時間の連続睡眠。近頃、目覚めて後、暫時記憶している夢が多い。今日の夢、小虫の大群が家具の下から這い出て、小魚の群れが、いっせいに動きを変えるごとく、右往左往、殺す気はまったくないのに、というより出来なくて怯えていながら、「殺生はいけない」と自分に言い聞かせ、見つめている、と、顔の判然としない女性が出現、猛然と踏み潰す。9,00am、TBSラジオ迎え。永六輔、小沢昭一両氏と、6・18コンサートの今日的意義につき延々考え、しゃべる。某企業、都心に有する小ホールを「文化的」に使って欲しいと、われに全権委任申し入れ。とても出来ることじゃない、いちおうお話を伺いに参上。本業は小説なのだ。以前ならこれを芯に置き、あれこれ手を出して、さほど障りにならなかった、今、うかつに引受けると、振回されてしまう。まったく30年前は、コンサートの楽屋で週刊誌連載小説1回分楽に書き得たのだ。ゲラをみるうち、眠。


4日
晴。4,00amおき。丸干し、もずく、かぼちゃ、ひじきの煮付け、いくら、ジャガ芋サラダ、しじみの味噌汁、アボガド、飯軽く一膳。一仕事済ませた気分。この後、ウコン、烏滑鶏酢。これに1万歩、軽ストレッチ。かくの如く努力すれど、精神のタルミいかんともしがたい。無為。いいふらしつづけている6・18コンサートまでに200枚は書かなきゃならないが、1日ボケーッ。8,00pm眠。


5日
晴。暖かい、7,00am起。途中、1度目覚めたが、血圧を計りすぐまた眠。本日、日中24℃まで上るという。雑誌連載1気に12枚書く。イラク圧殺におけるアメリカ経済のさらなる疲弊、SARSによる中国沿岸部繁栄の頓挫。わが国の挫折は、大地の歪みによる地震だろう。こっちが出不精のしるしだが、都心、川向こうへ足を運ぶたび、1本、同じような高層マンションが増えている。住い周辺も日に日に変って、安っぽい見てくれ、瓦屋根はほとんど失せた。予感に従いペットボトル大量に仕入れ、ガスボンベ、電池、即席ラーメン、シュラーフ、硬貨、家内あちこちに格納してあるのを確かめる。「地震は考えない」大手ゼネコン幹部が言っていた。「しかし超高層ビルは震度8でも倒れないよ、危ないのは昭和30年代に建てられた構築物」「へーえ、安全なのか、あの棒杭みたいなマンション」「倒れないと言ってるんだ、中がどうなるか、住む者の心がけひとつ」’95年の神戸では、1階でTVが飛び、冷蔵庫が歩いた、直下型において、一瞬、重力が0に近くなるらしい。世間様は、連休最後の日、われ一人地震対策、すべては「さだめ」のしからしむるところと心得ているが。夜遅く肌寒い。



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