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12月21日
雨。けっこうなオシメリ。銀行で各種支払い。またオテッパライとなる。銀座で衝動買い、来年10日を思えば中村うさぎ的心境。しかし彼女いい分野を拓いた、才能というべし。今やアイドル化。銀ブラも死語となった。いわゆるブランドを売る日本拠点ショップ、どこも満員の客。天一で天丼。地下鉄私鉄共通のカードに慣れ、タクシーが実にバカバカしくなった。この料金をつもり貯金。


22日
快晴。思い切って出向いた歯医者混んでいて止める。眼鏡屋で、アメリカ俳優ブルース・ウィルスのかけている眼鏡探すもなし。また銀座へ出て衝動買い。また天丼。夕刻の私鉄、男の中じゃわれは小さい方、シークレットシューズ履くことにする。ちょっと歩きにくいのだが。深夜久しぶりでボギーと散歩。寒いのにホームレス、ベンチで寝ている、とって返し古い毛布をプレゼント。かけてやったがビクとも動かぬ。死んでいるのかと顔を寄せたら眼が合った。コンバンワといったら、「ウン」。


23日
快晴。日本は良い国だと思う。こういう蒼空珍しい。新人作家二人来訪。2時間づつしゃべる。余計なお世話と自戒しつゝ、うるさくいう。飲めなくて、先方には気の毒。老猫クララ、すっかり元気になり、これまでまったくその気のなかったのに、生後6ヶ月の牝二コにチョッカイを出す、二コ仰天。


24日
快晴。文芸誌書く。今度こそ、100枚。現在、さしせまった締切はない。銀座衝動買いの服やら何やら届く、一人ファッションショウ。クリスマスイブ。われにどこからも歌のお座敷かからず。去年はカケモチでXマス前後唄ったのだが。少しさびしい。ボギーと散歩。ホームレス不在。


26日
快晴。諸方面歳末の始末ようやく収まって、ボギー散歩。わが国の飼犬事情、朝鮮半島における「食材」としてのドッグより欧米で問題となっている。大袈裟に言えばホロコースト、何十万匹が無残に殺されると。一方で、犬用アスレティッククラブ、巨大スーパー風ペットフードショップ、ついに今年は犬用クリスマスケーキ出現。断腸亭を気取って始めた日記だが、日常の節々はともかく、本家にみられる社会観察、なにより荷風散人の、当然ながら冷徹な眼がない。現在、日刊ゲンダイ一面の警告より、さらに日本はきびしい状態、これを市井人として、ありふれた街のできごと、道往く人の表情に描ければいいのだが。高橋源一郎「日本文学盛衰記」読む、新聞連載では、ややゲテモノにみなしていたが、一冊にまとまると今年の秀作。包丁捌きのほどが良い。この逆もできる。三島が鹿鳴館帰りの令嬢と逢うとか。井上ひさしが、孝明不審死について芝居を書き、深沢と一緒に逃げるとか。新宿ぶらつく、初めて、デフレ下バーゲンの店ひやかす。まず十分の一の値段。もっとも売れ残りばかり。この年末、将来、人々はさまざまな感慨と共に思いだすだろう。早々に寝る。


27日
晴。神戸時代、鎮守の神様だった菷の宮から、正月の縁起もの届く。以後、庭掃除、芝は枯れ、大きな葉の猛々しい草のみ残る、薄を刈ると根方すでに春の支度か青い。池の泥鱒えらく育った、ふだん何の気配もないが。東シナ海々戦、前線と幕僚との食い違い、60年前と同じ、真相また薮の中。日本軍国主義復活の周辺諸国懸念、バカバカしいいとみていたが、彼等の見方が正しかった。盧構橋一発の銃声当時の市民の反応どうだったのか。とにかくマスメディアは駄目。床屋から紀伊国屋ホール、毎年27,28日、永六輔がここをおさえていて催しもの、去年は「世直しトリオ」だった。久しぶりで、小沢昭一も加わり、28年ぶりの「中年御三家」終えて、新刊、10キロほど買う。柏木寿司屋、忘年会。




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